読書系フリーターの日常

ブラック企業を新卒半年で辞めた読書好きフリーターがいろいろ考えています。契約社員になりました。

バブル生まれのキラキラ愛人女子一代記/林真理子『花探し』

※ネタバレ有
時は平成、FBやtwitterの台頭により、キラキラ女子たちが跳梁跋扈する現代。
私はそんな彼女たちを、よりもむしろそんな彼女たちをウォッチングしている人たちが大好きで日々楽しんでいるのですが、キラキラした彼女たちは本当に実在するのだろうか。

正直フィクションとの境目のかなりグレーラインにいる方おられると思うのですが、フィクションといえば(キラキラした)女の業というか、そういうものを書かせたら林真理子に並ぶものはないと思っています。

花探し (新潮文庫)

花探し (新潮文庫)

 

 で、先週々に林真理子の『花探し』を読み、「もうキラキラしてない私の人生に価値などない・・・死のう」ってなったところ。
ぜんたい林真理子の小説は女の負の部分を掻き立てるパワーが強すぎるんです。今回のPMSとの相乗効果でガチで一週間沈みました。(この辺の話は以前書きました。読むとなんか向上心が湧いてくる作家 <森瑤子・林真理子>

キラキラしたものとおよそ無縁に生きている私でこれですが、むしろこれはキラキラしたものと無縁ゆえの羨望によるものなのかもしれません。
ではキラキラアカウントが林真理子を読んだらどうなるのか?大変気になります。誰か読んでみてほしい!

 

閑話休題『花探し』の話ですが、最近見るキラキラ女子とはおそらく若干路線が違いながらも、その行動範囲や思考はキラキラ女子そのもの。 だって、まず数ページ目で

「  青山のレストランにいる人と銀座のレストランにいる人の客層って違うわよねー」

から入るんですもの。

主人公のキラキラした友人「うわっあの男ずいぶん貧乏ったらしい女連れてるのね!スタイル良くもないのに紺のジャケットにGパンよ!」

主人公「ほんとだ!あはは!」

みたいなのもある。マウンティングか。

 

発表は約15年前ですが、現在みるキラキラアカウントとなんら変わりません。いつの時代もいたんだと思って、最初の行を書いたわけです。

これを書くにあたってキラキラ女子の定義とはなんぞや、と思いググったもののはっきりした答えが見つけられませんでした。

私的には、アッパークラスの生活圏で生きており・高級な洋服や食事が日常にあり・かつ公私が充実しており・美しく(ハイスぺ含め)男性に言い寄られ続ける女性、キラキラアカウントとはその生活ぶりを一般庶民に垣間見せてくだ下さったり、ご意見なぞして下さる方々との認識です。(自己顕示欲などの詳しい分析はあるでしょうが、それは触りません)

toianna.hatenablog.com

調べるにあたってこちらも参考にさせていただきました。キラキラアカウントって大企業で総合職してバリキャリだったり夫が高収入な人でしょ?と思っていたけど、愛人業もいて書く元気がわいてきました。

大雑把な内容と主人公

まず主人公の職業は、売れないモデル出身の愛人当然社長さんにもらったマンションの都内住まい。好きに使えるカードを与えられて、miumiuどころか、デートの度に40万や60万のブランドの衣服を揃える生活ぶり。

話をざっくり書くと、愛人で生きてる舞衣子21歳(愛人デビュー)から30歳(雲行きが怪しくなる)まで、老舗料亭の2代目・大沢の愛人をしながら数人の社長さんや実業家、御曹司や弁護士などのハイスペ男を同時進行して1番条件の良い男への乗り換えを狙う一代記です。

もう少し詳細に書くと、現在の老舗料亭の社長の愛人関係の雲行きが怪しくなってきたのでそれを保険にしながら次のスポンサーを見つけようとアレコレする話といったところでしょうか。

 

ここからわかる通り、舞衣子はひたすら自分の利益を考えて行動する性格。イモ娘出身から男に対しての振る舞いを愛人により教育され、味覚や洋服のセンスやそれぞれの価値などを教え込まれた、出会った男は軒並み手に入れないと気が済まなくなるような美女です。くびれた腰に大きな胸、そして無駄な脂肪が無く脚が綺麗らしい。

ついでに舞衣子はプロの愛人ですから、そこいらの女子みたいに「彼、私の見た目ばっかりで中身なんて全然見てくれない!(><)」みたいなヤワな感情は無く、常に「私の価値は手と金のかかった美しい容姿であり、それは万金に値する」というスタンスなので、これはこれで一本筋が通って小気味良い。

 

しかし、基準に設定されている最初の愛人があまりに羽振りが良かったため並みの男では相応しいと思えず、連れていく店やセンス、プレゼントやホテルの額、かけてくれるお金やアプローチで品定めするところが本筋。

この辺がキラキラアカウントっぽいと思いました。twitterがあったら絶対呟いてるよ。

舞衣子の愛人遍歴

全員不倫で40-50代であることを断っておきます(最後の綿貫は離婚歴2)。

1人目の神谷と最後の綿貫がハイライト。

1、バブルの不動産王・神谷

売れないモデルをしていた舞衣子を見初め、広尾ガーデンヒルズの最高級マンションを与えた後にいい服、高級な食事、夜の技やエステなどメンテナンス費用等を与えてプロの愛人・舞衣子をつくった男。

豪胆で、時代もあってか舞衣子が愛人であることを隠さず扱い、最も羽振りの良かった人物。

女を顔やおっぱいで選ぶ男なんて、まだガキなんだ。大人のちゃんとした男は足で選ぶ。君はそんなガキなんて一生相手にしなくていいように俺が育てた。

という名言がじわじわと効いてきています。神谷のキャラクターが見える名台詞。

バブル崩壊により財産を失い、舞衣子を手放す。

2、都心にいくつも店を構える老舗料亭の2代目・大沢

神谷凋落により舞衣子が譲渡された、神谷懇意の「信頼できる」人物である。お坊ちゃん育ちの次男で、現在料亭の経営をしている。。
(譲渡は舞衣子をもとのイモ娘に戻させないための神谷の「誠意」らしい。?????
南麻布のマンションを与えられる。

大沢との関係は6年以上続くが、他の女に手を出したり娘に愛人がいることを追求されたことで雲行きが微妙に。

その間にもよりよい男に何度も乗り換えようとするも、結局最も関係が長く金銭的に条件の良い大沢に戻ってきてしまう。

 3、大企業のトリリンガル顧問弁護士・浜田

神谷にもらった500万の会員権のスポーツクラブで声をかけてきた男性。

京橋の割烹や高級イタリアンに連れていかれ期待するも、ラブホテルに連れていかれた上、四度目以降ホテル代の節約のために舞衣子の家に来たがったことに激怒し切る。

4、天皇家とも繋がりがある名家の御曹司・牟田

上流パーティで知り合った、おっとりした公家顔で明治から続く名家の次男で生まれつきの上流育ち。天皇家とも結びつきがある、スペックでは飛びぬけた男。一見女遊びを知らず純粋そうに見えたので、それを教えてやるのも一興と関係をもつが、徐々に女遊びに慣れた感じや特殊な性的嗜好が出てきて、最後はまだ愛人にもならないのに友人に貸し与えようとしたことに激怒し、切る。

5、長者番付に入る流行作家・綿貫

無頼派で知れているが、本当はキザで芸能人気取りのひたすら自分のことばかり話す自意識過剰の有名作家。

押しの強さと知名度で女優や芸能人などとも浮名を流しているため、「一回ヤったら友達に自慢できるかも」と思い関係を持ち、なんとその後数度会って心を動かされてしまいます。

その口説きがこちら。(一部省略しながら引用しています)

(焼肉に綿貫が誘い、舞衣子が頑固に断った後)

「だけどさ、舞衣子は本当にくだらない男と付き合ってんだよな。俺はもう呆れちまったよ。」

 

「それって、どういうこと」

 

「男は皆言うことを聞くもんだと思ってる。女をここまで悪くさせるっていうのは、よっぽどくだらない男だよ。あんたこのままじゃまずいぜ、本当に嫌な女になっちまう」

 

「だったら、どうして私と付き合うのよ。嫌なら会わなきゃいいじゃない」

 

「馬鹿やろー、もう惚れちゃって後戻りできないから腹が立つんじゃないか。俺は違うよ。あんたと本気で付き合うつもりなんだからな。」

抱きすくめてチュー

 ああ!これ!!知ってる!!

恋愛工学とかナンパ界隈で聞くディスり」だ!いや違うか?ただのモラハラ男のアメとムチか?

しかし 女神のように慕われたことしかなかった舞衣子は、これで

自分が赤子になったような気がした。叱られた後、唇を押し付けられ、愛撫される。

 

ああ、私は不良なんだ。そう呼ばれるとくすぐったい暖かい気持ちになる。これから目の前の男にお仕置きを受けるのだ

こんな感じで心が動いてしまいます。ここから先は、「信用しているから」「愛しているから」という言葉と叱るor命令のコンボ→「教育されてる!」からの「好きになるかも」が続きます。なんかこの構図最近詳しく拝見した気が。

キラキラ婚活女子が望むハイスペ男との結婚は、こんな地獄ですけどいいですか - 妖怪男ウォッチ

「駆け落ちしよう」「大沢と手を切れ」という言葉に従おうとしたものの、あまりに現金な性格と金が絡んでいるゆえに、決め手は結局クリスマスプレゼントにがっかりして切ることに。

冷静になった舞衣子が綿貫を激情させずに手を切ろうとして取った策略がまたえげつないのですが、そこまでは書かないでおきます。

(番外編:家具デザイナーの男)

 一度結婚を申し込まれるまで付き合った男性。高級車を乗り回していたため金があると思ったがそれは見栄にすぎず、愛情はあったもののその連れていかれる店のショボさや生活圏の安さに失望し、別れる。彼は愛だけではやっていけないことを証明した。「あいつは最悪だった」エピソードで部分的にしか出てこない。

おわりに

この小説のすごいところは、なんといっても舞衣子と全く正反対の女がこれを書いたってこと。

すなわち、貧乏、ブスと言ったら林真理子に本当に失礼でしょうが、エッセイでも書いている通り、20代半ばまでは小さい会社でOLして四畳半みたいなボロアパートに住んでいたはず。

野心のすすめ (講談社現代新書)

野心のすすめ (講談社現代新書)

 

歳をとればとるほど綺麗になっていくのが林真理子ですが、若い頃は、うん。

この本を出した時点ではもう有名でお金持ちにもなっているはずですが、それにしても全く違う人間をよくもここまでと思う。

 

そしてキラキラ女子とその周辺の人間は、はたして15年以上前からあんまり変わらないのだろうか。それとも観察と描写が並外れているから普遍的なものとしてありありと想像できるのか。

最後舞衣子は29か30歳のとこで終わっているのですよね。大沢との別れが見えて焦っている状態で、次のお目がねににかなう人は見つかるのか。愛人以外で生きていけない女が、この先どうやって生きていくんだろう。

精神状態が落ち付いているときに、ぜひおすすめです。いろんな意味で心が揺さぶられる小説だと思います。変な方向から向上心も沸いてきますし。

 

最後はさっき無駄に思いついたキラキラ風林火山で〆たいと思います。

(見切った後)立ち去ること疾風の如し
(立場が不利になると)静かなること林の如し
(ブランド物を)ねだること火の如し
(もらったマンションから)動かざること山の如し

風・林・火・山☆

よかったら使ってください。では!

花探し (新潮文庫)

花探し (新潮文庫)