読書系フリーターの日常

ブラック企業を新卒半年で辞めた読書好きフリーターがいろいろ考えています。契約社員になりました。

『冷静と情熱のあいだ Rosso/Blu』 時間軸を中心とした私の解釈と、フィレンツェの街が象徴するもの

冷静と情熱のあいだ(通常版) [DVD]

冷静と情熱のあいだ(通常版) [DVD]

 

旅行ネタがいい加減くどいのだが、今回の旅行に絡めて本書の中のフィレンツェの役割とか象徴しているものについて、登場人物を絡めて自分なりの解釈を書いてみた。

旅行記→『冷静と情熱のあいだ』 聖地巡りしてきた(フィレンツェ編)

万一内容が重なったら二番煎じ感が出てしまうので「冷静と情熱のあいだ blu」で検索をかけ、書評系のブログをいくつか読んだのだが、「二人のすれ違いが切ない」とか「不誠実」「この展開はありえない」とか、なんか表面だけでもったいない!!と思う感じのがけっこうヒットした。

 

そこで、Bluは15回以上、Rossoを7,8回ほど読んでいる私が、Blu寄りにひいき目で深読みした解釈をぶつけてみようというところ。

というよりも、「時間」というこの2作品の軸を辿ってみたとき、一気に部分のもつ全体の意味が見えてきた気がするので、それをまとめた感じである。

 

結論から書くと、私はこの物語は、

二人の恋愛を題材として、現在と分離していた過去と未来を統合していく話

だと思っている。どういうことかというと。

冷静と情熱のあいだ―Rosso (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ―Rosso (角川文庫)

 
冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)

 

一応、人物の設定とあらすじは旅行記に簡単にまとめています。

※『rosso』『blu』両編のネタバレ含む。既に読んだ人向け。

この話の中心点・構成

この作品は「アオイの30歳の誕生日にフィレンツェのドゥオモで待ち合わせする」という、過去と未来を繋ぐ約束を軸に順正とアオイの恋愛を主題として、過去・現在・未来という時間が回る。

アオイと順正について

順正

順正の仕事は、無残に劣化した絵画のなくした命を再生することができる」「失われた時間を取り戻すことができる」仕事だ。

アオイと順正が別れた原因は、アオイが順正の子供を勝手に中絶したからだった。ここにかかっていると考える。
失った子供の命と、アオイ。過去と決着が付けられず、「過去に取り付かれている」のが順正だ。
「現在」の中でも、かつてアオイと自分の関係で起きたことを自分と相手を逆にした形で何度も再現している。

アオイ

アオイは、勝手に(といっても、それなりの理由があってのことだが)中絶したせいで、子供の命と順正を失った。今付き合っている恋人も、相談せずにいつも自分で完結して物事を決めるせいで、遠ざけてしまっている。
人を寄せつけず、変化のない生活を続けている、過去に捕われている」のがアオイ。
(私はなぜかアオイとまどマギのほむほむのイメージがダブる)

「変わらない」自分とどんどん変化していく周囲に、取り残されていく。

 

「現在」は、順正はアオイと真逆で子供っぽくグラマラスな、(おそらく)5歳以上下の学生・芽実と、アオイは順正と真逆の大人で寛大な10歳上のマーヴと。二人とも、それぞれと真逆のパートナーを持っていながらしっかり向き合わず、心の中でお互いを思い続けている。

 

現在から目を背け、向き合わないことで過去に居続ける。同時に、かつての自分とそっくりなお互いのパートナーは、過去の自分でもある。

「あの約束」を中心にした過去→現在→未来

お互いに、あの約束を覚えてはいないだろうと思っている。その日にアオイが来なかったら、過去を断ち切ろうとしているのが順正だ。

アオイの30歳の誕生日にフィレンツェのドゥオモに一緒に登るという約束の日まで、「あの日から未来に進めない」というのが『冷静と情熱のあいだ』の鍵となる。
ジョバンナ先生の、

約束は未来だわ。思い出は過去。

という言葉の通りに。

 

そして物語の終盤、約束の日の後、順正とアオイの人生はそれぞれ未来に向けて動き出す。
それぞれのパートナーという現在との決着と過去との統合。

 
初読のときはお互いと再開する直前にうまいことそれぞれパートナーを失った状態になった、というのがご都合主義的な展開に感じたのだけど、今は話の展開上の意味と、過去の自分との決別という二重の意味が含まれているのだと思っている。

フィレンツェの街が象徴するもの

その順正編の話の舞台となるのがフィレンツェなわけだが、物語の最初にあるようにフィレンツェルネッサンス発祥の地だ。本書より、ルネッサンスとはイタリア語で「再生」を意味する。

十六世紀から時間を止めたような街。「再生」「停滞」という、対称。


過去を守る為に、未来を犠牲にしてきた街。

だからこそ、アオイとの約束を果たしてアオイが去ったあと、過去を生き続ける都市フィレンツェ「この街の役目は終わった」のだ。

過去との決別。順正の中で、やっと現在だけが本当の色を」放った。


現在は点ではなく、永遠に続いているものだ、と悟った。僕は、過去を蘇らせるのではなく、未来に期待するだけではなく、現在を響かせなければならないのだ。

過去と現在と未来と自分自身が統合され、一致した。

おわりに

そして、過去に生きるフィレンツェから、アオイのいる現代的な都市、ミラノへ向かう「ユーロスターのタラップに足をかけた」のではないか。

最後のところは解釈がいろいろあると思うけれど、Blu派の私としては、「成熟した二人が再び新しく出会う」展開へ向かうラストだと、私はそう思っている。

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フィレンツェで撮った、ドゥオモと青空。