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読書系フリーターの日常

ブラック企業を新卒半年で辞めた読書好きフリーターがいろいろ考えています。契約社員になりました。

イタリア女子一人旅/『冷静と情熱のあいだ』 聖地巡りしてきた(フィレンツェ編)

旅行 読書

 前に書いた通り、ヨーロッパに20日ほど一人旅してきました。ドイツを下って、ヴェネツィアからフィレンツェへ。
旅に出るきっかけとなったのが、辻仁成の『冷静と情熱のあいだでした。

フィレンツェが舞台で、フィレンツェの街が様々な意味を持って象徴され、描かれているこの作品。読んでいて、その中に入ってみたいと強く思っていました。

行けるうちに。ということで、フリーターのうちに行ってきた次第です。

冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ―Blu (角川文庫)

 

 冷静と情熱のあいだ を読んだことのある人は地名やシーンに、あったあった!と覚えがあると思います。
もちろん読んでいなくても、旅行記として楽しんでもらえたら。

※画像多め

 一応本文中に出てきた箇所を回っているので、あらすじと内容を人物紹介で簡単に済ませます。読まなくても差し支えありません。

順正・・・フィレンツェで絵画修復師*1として仕事をしている。「過去を取り戻す」「失われた命を取り戻す」仕事にやりがいを感じている。

・アオイ・・・大学時代、順正が付き合っていた運命的な女性。読書家で大人っぽい。ある事件が原因で別れたが、順正の心に残ってずっと忘れられない。
お互いが「相手はもう忘れただろう」と思っている、アオイの30歳の誕生日にフィレンツェのドゥオモで待ち合わせする、という約束が物語のキーポイント。


・ジョバンナ先生
・・・順正の働く工房のトップで、順正の母親的な存在。

※私は映画は観ていませんので、それとは異なります。ミラノには行けませんでした・・・

 

 ●●●

この街はいつだって光が降り注いでいる。

 小説の最初の一文はこれでした。読んだ瞬間、一瞬で古都に快晴の青空が広がる光景が浮かんで、私はいつでも物語の中に入り込むことができます。

まず空を見よう!と決めていました。
「空」はキーワードのひとつですが、本当に、空が広くてとてつもなく青い。

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「青空はどこまでも高く、しかも水で薄めた絵の具で描いたように涼しく透き通っている。」(p.9)

これはアルノ川の対岸より。

 

フィレンツェの街は、物語の中で、フィレンツェは過去の象徴として描かれています。ずっと見てみたかった。古い街並みは好きです。京都とかもね。

「十六世紀以降、時間を止めてしまった街。まるで街全体が美術館といった感じ」

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inシニョーリア広場

 

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 こんな普通のホテルの入り口を覗いてみると、平気で壁画が残っている。そんな街です。その辺を歩いていると、辻なんかに普通に古い宗教画が壁にはまってたりもして・・・。

 

まずは大本命のドゥオモへ。観光の中心はここで、駅から徒歩10分ほど。

街の中心、ドゥオモのブルネッレスキ作のクーポラ*2

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 「半球状の円蓋クーポラは、スカートを膨らませた中世の貴婦人を見るようで微笑ましい。」(p.10)

 言われてみればそう見えてきます。表現力がさすが辻仁成先生である。

 

ドゥオモの袂に立ち、大聖堂の壁面沿いに空を見上げるのが順正の日課でした。

こんな感じだろうか?

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このサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂は、本文中に書かれている通りに、「威厳と優雅さに溢れ、見上げる者を圧倒」(p.10)されます。あまりに大きく、全面に施された美しい石の装飾は、何時間でも見ていられそうで。

・・・実際は周りが観光客にお土産売りでごったごたなので、それどころではなかったのですけど。一度ガラガラのときに一人占めしたいけれど、オフシーズンの平日でこれなので、ガラガラになる時期なんて存在しないのでしょう。

花の聖母教会と呼ばれるそうです。

物語の中で、ドゥオモは街の中心・物語の目的地として何度も描かれます。

 

たとえば・・・

「ポンテ・ヴェッキオの先に、夕焼け色に染まるドゥオモのクーポラを見ると、なぜだろう、安心するんだ。」(p.10)

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ポンテ・ヴェッキオは街を南北にはしるアルノ川に架かっている橋のひとつ。フィレンツェ最古の橋で、1345年再建のものが現在残っているこれだそうです。(by wikipedia)

その夕焼けの風景が見たくて、5日の滞在全日17時くらいにポンテ・ヴェッキオでスタンバイしていたのですが、天気が良すぎて 夕焼けは一度も見られませんでした。さぞ綺麗だったことでしょう。残念。

 「そんな心地よい夕刻は、ついドゥオモまで大股で歩きたくなる。」(p.10)

その通り、ドゥオモからポンテ・ヴェッキオは10分もかからない距離。

本文から察するに、順生の家はポンテ・ヴェッキオを挟んでアルノ川の、ドゥオモ側の対岸なんですね。

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この辺かな? アルノ川を渡り、東に進むと急な坂道に入ります。高台です。(正面のトンネルをくぐった先がアルノ川)

 

順正の働く工房はヴェッキオ橋の傍ら、とある。

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これがポンテ・ヴェッキオの全体なんですが、この橋を通ると、最初橋に入った感覚が持てなかったくらいに両横に建物が並んでいて、一大観光地なので橋の東西もお店がびっしり。工房なんて入る隙間、あるのかな?それとも10年前はそうではなかったのか。

しかし遠くから見ると、造形美というか、技術の粋を尽くした感があります。昼、夜と違う顔を見せてくれますね。

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さて、ポンテ・ヴェッキオ(ポンテ=橋)を渡り・・・

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  「工房の前を登るグイッチャルディーニ通りを50mほど辿ると、パラッツォ・ピッティの重々しい立面(ファザード)が姿を現す。」(p.47)

 

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この グイッチャルディーニ通りは、本当にタダの観光通りでした。

 

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 パラッツォ・ピッティ。

フィレンツェでも名高い大商人ルーカ・ピッティが十五世紀半ばに作らせた私邸だ。」(p.47)

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入り口から入ると中はこんな感じ。

順正は、この中にあるパラティーナ美術館の、ラファエロ作「「大公の聖母」がお気に入りでした。

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聖母マリア - Wikipedia

写真を撮ったのですが汚かったのでwikiより。意外と小さかった。

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貴重な絵画が飾られた部屋がこれでもかと続きます。絵画が好きなら絶対にお勧めしたい。中心地から外れるので、あまり混まずにゆっくり観られます。

 

順正のお気に入りといえば、サン・マルコ修道院所蔵のフラ・アンジェリコ作「受胎告知」」も外せません。

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二階に入れるのを知らなくて見れなかった・・・・。

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フラ・アンジェリコ - Wikiwand

フラ・アンジェリコの美術館と呼んでいいくらいに、作品を所有」しているらしい。

中庭を四角く囲んだ壁面の屋根に描かれた壁画もとても良かったですけどね。

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 ちなみにこれは、ボッティチェリで有名なウフィッツィ美術館レオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」。(私はボッティチェリが好きです。)

どの建物も絵画がたくさん。「受胎告知」は有名なモチーフなのでたくさん見ました。様々な描き方がありますが、同じモチーフを見比べるのが楽しい。時代の傾向とか、もう少し知っていたら面白かったはず・・・。

 

移動中も常に古い建物や絵画、像などがあちこちに。

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ジョバンナ先生中世の時代からぴたっと時間を止めてしまった街なのよ。歴史を守る為に、未来を犠牲にしてきた街。」

アルノ川に近い通りだったことは覚えていますが、何だったか。こんなのがそこら中にありました。

●●●

 

風景から一度離れて、ごはんです。

「誰もいない作業場で一人近くのバールで買ってきたパニーノをカプチーノで胃に流し込むのは格別だ。」(p.106)

これね、やってみたかったんです。工房は無理ですが、パンとかサンドイッチはあちこちに売っています。

これはドゥオモの入り口側にある細い通りを入ってすぐのところにある、安くておいしい行列のできるお店 i`tostoで買いました。オススメ。お昼しか空いてない。

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4~5EUROで巨大なトーストが食べられます。20種類くらい味があって、これはソーセージとチェダーのチリソース。具が端までたっぷり。かぶりつく!ザクッ!チーズが伸びるッ!ソーセージがこぼれる!とドゥオモの横のベンチに座って、夢中で。

これはトーストなのだけど、おおまかな意味で言えばパンに具を挟めばパニーニなのでいいでしょう。

イタリアのカプチーノ、さすがにおいしかった。日本でも飲みたくて仕方ない・・・。

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風景に戻ります。

アオイと順正約束の地、ドゥオモ。

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アオイ「私の30歳の誕生日にフィレンツェのドゥオモのね、クーポラの上で待ち合わせするの。どお?」(p.99)

 

ここが大本命で登るはずだったのですが、まさかの行く予定だった日程全て工事で立ち入り禁止。私は一体何をしに行ったんでしょうか・・・。

教訓。一番行きたいところは行けるときに行くべし。わかっていたはずなのに、つい最終日付近にもっていっちゃったんですよね。

悔しいので、代わりにシニョーリア広場に面したヴェッキオ宮の塔に登りました。

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入り口に ダヴィデ像のレプリカがあるよ。

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アオイ「何百段の階段で汗を流して必死で登り切った後に待っているフィレンツェの美しい中世の街並は、間違いなく恋人たちの心を結びつける美徳があるんだそうよ」

人1人くらいの狭い階段は、ドゥオモも一緒。ドゥオモの階段はらせん状だそうです。

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(私はぼっちで行きました)

 

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 しかし、上から見る風景は紛れもなく、小説で描かれていた通り。茶褐色の屋根が立ち並びます。

全方角から見ることができますが、ドゥオモを正面に構えた景色が圧倒的に壮大です

ドゥオモからだと当然ドゥオモが見えないので、ある意味これで良かったのかもしれません。

 

ちなみに美術館との共通チケットで入ると美術館も行けますが、壮麗な絵画や装飾は絶対に見る価値があります。ついでで行きましたが、予想を上回る素晴らしさ。

綺麗に修復されたものや修復途中のもの、最後の修復はかなり前なのでは、と思うくらい古いのが共存していて、順正の仕事・絵画修復がどれだけ美術品にとって重要なのか素人ながら感じられました。行って良かった。

 

さて、塔に登ったのが最終日。

小説は、順正がフィレンツェの中心駅、サンタマリア・ノヴェッラ駅でユーロスター(特急)に乗るところで終わりでしたので、そんな感じの写真で終わりです。

改札を抜けると、ホームにユーロスターは横たわっている。

「新しい百年か」
大きく深呼吸をしてからユーロスターのタラップに右足をかける。

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写真のこれは多分ユーロスターではないし、駅に改札も存在しませんでしたが気分のみ。

 

 

フィレンツェを訪れて冷静と情熱のあいだ blu』に出てきた風景を見ることは、私の人生の目標のひとつでした。行けるときに行けて良かった。

 

今度は実際に見た記憶と共に、『冷静と情熱のあいだ』を、もう一度読みなおそう。

 

 

※引用部分は「」の太い黒字

*1:保存状態や過年により劣化した絵画に劣化が進まないよう処理したり、新たに彩色を復元したり事故などで傷付いてしまったものを元の状態に復元する技術職。

*2:半円球のドーム状の屋根のこと